Column
武道館公演が特別に感じられる理由
THE ALFEEのライブを語るうえで、「日本武道館」という場所にはやはり格別な響きがありますよね。日本のバンドとして歴代最多の武道館公演数を誇り、今なおその金字塔を自ら更新し続けているという事実だけでも、ここが彼らにとってどれほど特別で、まさにホームグラウンドと呼ぶべき聖地なのかがよく分かります。
今でこそ武道館の代名詞のような存在ですが、彼らが初めてあのステージに立った1983年の初武道館公演は、まさに語り草となる伝説の幕開けでした。当時の武道館での単独公演といえば、現在でいう東京ドーム公演以上の重みとステータスがあり、限られた一握りのトップスターにしか許されない文字通りの「聖域」だったのです。
しかも当時は、SNSはもちろんインターネット自体が存在しない時代。情報の拡散やバズなど起こりようもなく、ファン同士の口コミや手配りのチラシ、地道なライブハウス回りや全国の学園祭行脚だけが頼りでした。そんな状況下で、まだ「メリーアン」でブレイクする直前、世間的なヒット曲が1曲もないバンドが武道館を満員にしてみせたのです。生身のステージを重ねて築き上げたファンとの確固たる信頼関係、そして自らの音楽への確信だけであの巨大な殿堂を埋め尽くしたという事実は、彼らが正真正銘の「ライブバンド」であることを証明する原点のエピソードと言えます。
同じツアーであっても、訪れる会場によって受け取る感動の質は少しずつ異なります。地方のホールには客席とステージが呼吸を合わせるような濃密な親密さがあり、アリーナクラスの会場には圧倒的なスケール感があります。その中にあって武道館は、ファンにとって「1年の集大成や節目を見届ける場所」としての特別な引力を放ち続けています。
開催時期がクリスマスということも、この場所の特別感に拍車をかけていますよね。なんといっても、名曲「聖夜 -二人のSilent Night-」をクリスマス当日に生で聴けるのは、この武道館ならでは(12月の他会場で演奏されることもありますが、やはり当日の響きは別格です)。
個人的に、あの曲は彼らの楽曲の中でも「完璧」と言い切れる名曲の一つだと思っています。あのアコギのイントロ、あの出だしの響きだけでもう完璧だと思いませんか? まるで行進曲のように胸を躍らせる明るいアンサンブルが抜群で、一瞬で聖夜の景色へと連れ去られます。そしてAメロは、坂崎さんのどこまでも温かく抜けの良い声に120%マッチしている。そこからBメロへと移るあの見事な転調は「さすが」と唸るしかありません。続くサビ(Cメロ)では、3声コーラスと極上のメロディーが溶け合い、まるで夢心地のような至福の空間を生み出してくれます。
さらに心を奪われるのが、間奏のギターソロです。教会の鐘(ベル)の音を想起させるあのドラマチックなメロディーとギターサウンド……一体どうしたらあんなフレーズを思いつくのでしょうか。極めつけは、間奏終わりに鳴り響く厳かなミサ曲のような荘厳なコーラス(グローリー、グローリー、ハレルヤ)。ロックバンドのフォーマットであそこまで神聖で圧倒的なコーラスワークを成立させられるなんて、世界中を探しても絶対にTHE ALFEE以外には真似できません。※コーラスワークの参考にしているというQueenは除きますw
イントロが鳴り響いた瞬間の、客席全体が温かな光に包まれるようなあの幸福感はまさに格別。さらに、時にはふなっしーやダチョウ倶楽部といった意外すぎる豪華ゲストが突如乱入して会場中を爆笑の渦に巻き込むなど、お祭りムード満載のサプライズが飛び出すのも武道館ならではの醍醐味と言えます。
激戦のチケットをなんとか手に入れ、吐く息の白さに冬の訪れを感じながら九段下の坂を上り、終演後は胸いっぱいの余韻と熱狂を抱えて夜風の中を家路につく……。その道中の寒さや空気感まで含めて、1年の締めくくりとして心に深く刻まれます(ツアー全体の締めくくりは大阪城ホールになることが多いですが、関東のファンにとっては武道館こそがまさに年末の総決算ですね)。
単なる公演日程や数字の記録だけでは、こうした特別さは伝わりません。ネットもSNSもない時代に「ヒット曲なし」で挑み、当時の巨大な壁を突破した覚悟から歴代最多記録の現在に至る歴史、完璧な構成美を誇る「聖夜」の感動、笑顔が弾けるサプライズ、そして客席に集うファン一人ひとりの熱い想い。それらがすべて重なり合って、日本武道館はファンにとって唯一無二の場所であり続けているのだと思います。